核家族化の悲劇

 

最近、毎日のように新聞をにぎわしているのが「幼児虐待」「子殺し」「DV」といった事件である。なぜこれほど多いのか。その根底にどのような問題が潜んでいるのであろうか。

 戦前は、農村でみんな貧しいながらも助け合って生きていた。また、大家族制度のもとで子育ては、おじいちゃん・おばあちゃんの助けを借りながらなされてきた。ところが、 戦後、都市化核家族化が進み、 子どもを育てる環境は激変した。こうした助け合いは期待できなくなったのだ。

 たとえ専業主婦でも1日中家の中にいて子どもと向き合っていればストレスがたまる。ましてや、女性が高学歴化し、フルタイムで仕事をするようになれば、子育ての困難さは言うべくもない。結局、子育てをしながら勤めに出る無理がいろんな形で現れてくる。

 特に、子どもが小さい間はそうだ。ストレスがたまり、夫婦間の不満が蓄積され、溝が広がる。その結果、幼児虐待や子殺しが頻発したり、子育てという義務を終了したとたんに熟年離婚にいたる。

 阪大の原田正文教授(人間科学部)が「母親だけで四六時中子どもと向き合うような育児は、歴史上かつてなかった。そもそも無理なのだ」(2006年12月9日 日経新聞夕刊) と書いている。夫婦どっちが悪いのでもない。これらは皆、都市化・核家族化の悲劇とでも呼ぶべき現象なのかもしれない。>

 

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